話題の拡散医薬とは?
急速に進められている医学研究ですが、その中でも特に近年大きな注目を集めているのが「核酸医薬」という新しい医薬品です。
「核酸医薬」とは簡単に言うと、私達の遺伝子情報として体内にあるDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の成分となっている4種類の塩基を組み合わせることによって生成される医薬品のことです。
それだけを聞くと何やらよくわかりませんが、つまり従来のように化学薬品によって作った薬品と異なり、人の体内にもともと備わっている遺伝子やタンパク質を使用することにより副作用をおさえ高い効果を得ることができることを目指す目的で開発をした新しい医薬品ということです。
私達はがんなどの重大な疾病に罹患してしまった場合には数多くの医薬品を使用することになりますが、その多くは本来私達の体の内部には存在していない化学反応によって精製された物質です。
それらは病気の治療に高い効果を生み出すことがある一方で、非常につらい副作用をもたらしてしまうこともよくあります。
そこで「核酸医薬」では病気の発生や進行をもたらす遺伝子やタンパク質を特定することにより、その数を調整して治療を高めることを目指します。
抗がん剤研究の最先端として研究
「核酸医薬」がもともと社会的に認知されるようになたきっかけは抗がん治療の現場です。
がんは日本のみならず世界全体で多くの重症患者を生み出す重大な疾病となっていますが、その時に用いられる抗がん剤は非常に人体に与える影響が強く、薬剤を長期的に服用することそれ自体がその人の健康に著しい悪影響を与えてしまうことになります。
そこでそうした患者の体への負担を減らしつつがん細胞の増殖を防ぐための新しい抗がん剤として研究をされるようになったのが「核酸医薬」ということになります。
がん細胞は人の体内に発生するとすさまじい勢いで増殖を細胞を複製させながら全身へ広がっていきます。
そこで「核酸医薬」によってDNAやRNAを投与することによりがん細胞の増殖や転移をする遺伝子の動きを止めていきます。
この核酸医薬はもともと米国で研究がスタートしたのですが、リーマン・ショックが起こったことにより研究機関への資金が不足し一時的に研究が停止となってしまっていました。
それが景気の持ち直しもあってようやく近年研究が再燃してきており、現在も急速に多くの施設で開発がされています。
日本においても研究が進んでいます
日本においても米国の企業と提携をするなどして核酸医薬の研究は進められています。
全国の大学でも独自の研究が進んでおり、東京大学発のベンチャー企業である「リボミック」などは2012年に強い鎮痛効果のある核酸医薬を開発しました。
がんになると体内に強い痛みを伴うようになるため、モルヒネのような強い鎮痛剤を投与します。
そこで新たに発見した「NGF(神経成長因子)」というタンパク質をおさえる核酸医薬を投与することにより、モルヒネ以上の鎮痛効果を実現することができました。
この成分は日本国内で物質特許が取得されており、既に試験をクリアし安全性の高い薬品として使用される機会が増えています。
さらに研究が進み一般的に使用されるようになれば、モルヒネのような常習性・依存性のない安全な製品ということになります。