くすり学生マガジン
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ゲノム医療について

ゲノム医療について

新世代の医療として注目の方法

「ゲノム医療」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

これは平成27年2月13日に「ゲノム医療実現推進協議会」が政府によって開催されるようになるほど、これからの医療を根本から見直すことにもなる大きな革命的な方法として注目を受けている方法です。

「ゲノム」という言葉自体はおそらく中学校や高校の生物の授業で耳にしたことがあるのではないかと思いますが、簡単に言うと人の生命の設計図である「パーソナルゲノム」のことをさします。

私達の体は親やそのまた親の世代からの長い歴史の中で引き継がれてきた遺伝子によって構成されています。

そのため人は一人ずつ全く異なった遺伝子情報を持っており、そのことが個人ごとにかかりやすい病気や先天的な体質の有無を決めることになります。

逆に言えば何らかの病気にかかったとき、患者さんに対して行う治療の方法は全く同じ方法がベストとなるわけではなく、その人ごとに適した治療方法があるということにもなります。

「ゲノム医療」とはまさにそうした遺伝子情報からその人がなりやすい病気を予測し、かつかかってしまった病気に対応していこうという発想のもとに生まれたものです。

実際に始まっているゲノム医療

現在世界的に研究が進められているのが、その人の遺伝情報を調べることにより将来大きな疾病にかかる可能性があるかということを判定するということです。

記憶に新しいところでは、ハリウッドの有名女優であるアンジェリーナ・ジョリーが現在は全く健康であったにもかかわらず、ゲノム医療により将来乳がんになる可能性があると診断されたことにより乳房切除の手術うを受けたという事例があります。

このことは「New York Times」など有名な雑誌で多く取り上げられたため、ゲノム医療についての認知度は一気に高まりました。

その後あまりにも有名になったことから「23andMe」という組織が専用のキットにその人の遺伝子情報を採取したものを入れて送ることでアンジェリーナ・ジョリー同様に将来の病気の可能性を判定するというサービスを開始しました。

しかしながらこのゲノム解析サービスについてはまだ完全に医学的に確立したわけではなく正確性に疑問があることからFDA(アメリカ食品医薬品局:日本で言う厚生労働省のような機関)がキットの販売を差し止めるという騒ぎになりました。

しかしながらFDAはゲノム解析サービスそのものを科学的根拠に乏しいと批難するのではなく、現在まだ起こっていない病状について断定的に診断するということによる誤診の危険を考えて停止命令を出しています。

ですので今後研究が進むことにより、再び同様のサービスが一般的に利用ができるようになる可能性は十分にあります。

過信するのではなく総合的に考える

現在のゲノム医療について最も問題視されているのが、先天的な要因のみによって病気の発症を予測するということの危険性です。

例えば私達は普段から喫煙や過度な飲酒、肥満などが生活習慣病を引き起こし将来的に深刻な病状になることをさまざまな場所で知らされています。

仮にゲノム医療によって全ての病気の発生が予測できるということになれば、喫煙や飲酒などは病気の要因ではないということになってしまいます。

また仮に遺伝子情報が将来病気になる可能性があるというものであっても、実際に発症するかどうかについて検証する手段はありません。

技術的にもまだ不確定なところの多い技術なので、一般的な診療に当たり前に導入されるまでにはまだまだ長い時間がかかりそうです。