薬剤師の使命は国民の健康安全を守ること
薬剤師としての心構えは「薬剤師倫理規定」によって詳しく定められています。
国家資格としての薬剤師は「薬剤師法」という法律によってその職務を細かく定められています。
その第一条によると薬剤師の仕事は「調剤・医薬品の供給そのほか、薬事衛生をつかさどるもの」と決められています。
つまり薬剤師の仕事の根幹となるのは、国民の健康と安全を守るための仕事をしていくということでありそのためには調剤の技術だけでなく高い倫理性が求められます。
最初に紹介した「薬剤師倫理規定」とは社団法人日本薬剤師会が提言をしているものであり、前文より薬剤師は日本の法律を順守するとともに生命と健康を保持増進するための活動を行っていくということを示しています。
この「薬剤師倫理規定」は日本薬剤師会の公式サイトに誰でも見られる形で公開されているとともに、薬学部での学習で必ず目を通すものとなっているので卒業をしたらそれきりとせず定期的に読みなおしをしておきたい文書です。
過去の薬害問題から学ぶべきこと
薬剤師としての仕事の裾野は年々広がりを見せていますが、こうした倫理規定は定期的に見直しの必要がなされています。
これはかつて日本国内においては数多くの薬害問題を起こしてきたという過去があるからです。
古くはサリドマイドやキノホルム中毒(スモン)といったものから、薬害エイズ事件やソリブジンといったものの薬害事件はわずか数十年前のことながら頻繁に社会問題として取り上げられてきました。
中でも社会を震撼させた薬害問題の一つが1970年代に起きた薬害エイズ事件で、当時血友病の治療に使用されてきた血液製剤の中にHIVウイルスが含まれていたため全血友病患者の実に4割にあたる1800人がエイズに感染するという大事故が起こりました。
本来ならば危険性が発覚した時点で薬品を回収するべきだったのですが、医師や製薬企業、厚生労働省が組織ぐるみでそれを隠蔽したがために最悪の事態になってから発覚するということになりました。
薬剤師の仕事とは単に薬品を処方することではなく、その薬品によって国民の健康と安全を守るものなのだということを忘れてしまっては、営利優先で起こった上記のような事故を防ぐことはできません。
薬品を患者さんに渡す最後の医療関係者であるという重みは、新人ベテラン関わらずずっと持っていきたいところです。